札幌市|リタルダンドとア・テンポ【音楽工房G.M.P】
2023/05/22
いい楽譜を使うことは大切なことです
札幌市南区真駒内駅近くの音楽教室〈ピアノ教室、声楽教室〉、音楽工房G.M.P(ジーエムピー)の大楽勝美です。今回もブログをお読みいただき、ありがとうございます。
当たり前のことですが、曲を勉強する時には必ず、楽譜を使いますよね(笑)。僕が若い時(もちろん今もですが)、ベートーヴェンはこの楽譜、リストはこの楽譜と先生に言われて、楽譜を買ったものですが、どうも最近の生徒さんや先生までも楽譜の重要性にあまり頓着ないというか、「どれでも一緒」的な感じがすることがあります。あとは、誰かの演奏を真似してみたり、雑誌などに出ているアナリーゼを鵜呑みにしてしまったりして、根拠のない自信で弾いたり、歌ったり、教えたりしてしまってはいませんでしょうか?
以前、研究譜と演奏譜とことを少し述べたことがあると思いますが、今回は特に、ロマン派の演奏における「リタルダンド」について少し書いてみようかと思います。
まず、ベートーヴェンなどの古典派のリタルダンドは、楽譜を見てもロマン派ほど多用されてませんし、演奏方法としてはrit.のあとはa tempoと書かれてありますので、このような場合は、ゆっくりしたあと、a tempoですぐ最初のテンポにしっかり戻らなくてはなりません。まあ今さらですが(笑)。
ところが、ロマン派の作品を演奏するときは少々注意が必要です。それは、リタルダンドの長さです。リタルダンドと一口に言ってもritardando. rit. ri-tar-dan-doなどの書き方や、作曲家によってはシューマンなどは一つの音だけにrit.と書いてある場所もあって、テヌート(tenuto)的に使われるケースもあったりで、よく楽譜を見ていくと興味深いものがあります。
そしてとても重要な表現として、リタルダンドの後のア・テンポが古典派のようにすぐに元のテンポに戻るのではなく、ア・テンポからリタルダンドの拍数分あるいは小節数分の時間をかけて戻していく弾き方があるということです。
つまり、ア・テンポはテンポを戻すきっかけになるということなんですね。もちろん、すぐテンポに戻すケースもあります。しかも、ア・テンポというのは最初のテンポでという意味ですが、楽譜をよく見ないと、最初のテンポではなく、その前のテンポに戻す場合もあるのです。前の部分が最初のテンポより遅かったり、早かったりとア・テンポの表示を見てやみくもに最初のテンポに戻らないように気をつけましょう。
このように、しっかりと校訂されて編集された信頼のおける楽譜を使用することがいい演奏への第一歩なのです。