札幌市|クレッシェンドやディミヌエンドにも、生活感があふれています【音楽工房G.M.P】
2021/08/20
知ると面白いクレッシェンドやディミヌエンド
札幌市南区のピアノ教室、音楽工房G.M.Pの大楽勝美です。本日もブログをお読みいただき、ありがとうございます。先日は生活用語から見た速度記号の意味をざっと書いてみましたが、今日は楽譜の中に色々書かれてある表情記号についても少し書いてみることにします。楽譜をのぞいてみると頻繁に出てくるのが「crescendo」とか「cresce.」という言葉や「<」の印、「クレッシェンド」です。意味は「だんだん強く」と辞典には書いてあります。このクレッシェンド、本来のイタリア語の意味は「成長する」という意味です。ですので、音がだんだん成長する=強くなっていくという風になるわけです。しかしながらどのくらい成長するのか=強くなるのかは楽譜をよく見なければなりません。ffに行くのかfまで?あるいはmfまでなのか?自分の意識の中に「強く」が強すぎてしまうと、ただただ強くしてしまいがちですが、「成長する」の意識があれば、その成長度合いをイメージできます。そうすれば、やたらと猪突猛進するクレッシェンドにならないかもしれません。クレッシェンドマークを見ると急に強くする方をよく見かけますが、その時はベートーヴェンの言葉を思い出していただくとよいかもしれません。「クレッシェンドはその始まりはまだ前の強さである。クレッシェンドが終わる寸前で強くすれば十分である。しかも、クレッシェンドはテンポを速くしてはいけない。」と言っています。テンポを速くしてはいけないのは、古典派の作品全体に言えることですが。ロマン派以降になるとむしろテンポアップして弾くように変わっていきます。
「diminuendo」、「dim.」、「decrescendo」、「decresc.」=ディミヌエンド、デクレッシェンド(だんだん弱く)音楽辞典ではこう書かれています。「なあんだ、クレッシェンドの反対の意味かあ。」と安心してはいけません。このディミヌエンド、なかなか侮れません。本来は「衰退する」とか「減らす」とかを意味するイタリア語の動詞ですが、音楽用語で使われるとエネルギーがだんだん弱くなっていくという風になるのですが、問題はディミヌエンドの最後なのであります。またまた、ベートーヴェン先生によると、「ディミヌエンドの最初はまだ強い。最後はゆっくりすることなく、むしろさっと終わるように。」とおっしゃっていますが、ショパンやリスト以降になると、「ほんの少しブレーキをかけながら弱くする。」に変わっていきます。実は、一番ディミヌエンドやデクレッシェンドに対する指示がはっきりしていた作曲家がシューベルトなんです。彼は、「dininuendo」と「decrescendo」を使い分けました。デクレッシェンドとは「クレッシェンドしないで」とい本来のイタリア語の意味を尊重したのです。つまり、強くしないということはあまりディミヌエンドもかけず、終わりもゆっくりしないでさらっと終わるということなんです。逆に、ディミヌエンドは弱くしながら最後はゆっくりする、つまりリタルダンドもかけるという指示が作品の中ではっきり使い分けられているのです。
これらの事から、やっぱり大作曲家たちはイタリア語の熟知感が相当なものだったんだろうなぁ、ということがよく分かります。ベートーヴェンやシューベルトなどの古典派、シューマンやブラームス、リスト、ショパンなどのロマンティックな作品を弾く時もイタリア語辞典がそばにあると、また違った楽譜の読み方を楽しめて、イメージが膨らむこともあるかもしれませんね(笑)
ちなみに、音楽用語はほとんどが現在進行形で書かれています。「何々ド」と付く言葉、リタルダンド、クレッシェンド、ディミヌエンド、スケルツァンド等などはみんな現在進行形です。こういう書き方も作品を演奏するフレッシュ感を表していることなのかもしれません。