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練習曲の正しい使い方

練習曲の正しい使い方

札幌市南区の音楽教室「音楽工房G・M・P」の大楽勝美です。

みなさん、ピアノのレッスンで使用する練習曲教材は、どういうふうに選んでますか?ご自分で選んでますか、それとも先生に選んでいただいてますか?あるいは練習曲をやっていないとか、多分、色々だと思うのですが、選び方や使い方次第で、上達に大きな差がでることについては、なかなかピンとこないところもあるかもしれません。しかし、間違った使い方をするといくら練習しても上達しないことがよくあります。練習曲を使用する意味をまず理解することが大事だと思います。

そこで今日は、正しい練習曲教材の選び方、その紐付け方について私見を述べてみることにします。

教本選び方、大丈夫ですか?

ピアノを習う時に必ず必要な物は、楽譜です。こんなことは分かり切ったことです(笑)が、我々が習い始めた時は、指のトレーニングとしてハノン、練習曲はツェルニー、バッハの作品、そしてベートーヴェンなどの作品と、4つの教本がスタンダードでした。今は色々な教本がありますから、選ぶ材料も様々に拡がって選びやすくはなりましたが、基本この四つの柱による方向性は変わらないと言ってもよいと思います。しかしながら、どの教本を選ぶかによってその後の上達に差がついてしまうことは、教本の種類が増え、選択肢が増えた分だけ、なかなか難しくなったとも言えますが。三種の神器ならぬ、四種の神器を信じて知らず知らずのうちに、上達を妨げる負のスパイラルに陥ってしまうもあるのです。
では、正しい教本の選び方とはいったいどういうこなのでしょうか?

バロック音楽は特別

最初に申し上げておきます。前にも書きましたが、バロック音楽は別です。ポリフォニー音楽とホモフォニー音楽は区別してそれぞれの練習をしなければならないからです。それでも、いきなりバッハは難しいかもしれないので、フランスバロックのラモーやクープラン、あるいはヘンデルやスカルラッティなどの作品から始めるのもいいでしょう。スペインの作曲家、ソレルなんかもとてもたくさんの作品を残しています。
バロック音楽の教本は我々の時代より圧倒的に今の方が沢山種類がありますので、一般的に知られていないバロックの作曲家の作品からも、自分に合った曲を容易に見つけられると思います。

音楽的な練習曲とテクニカル練習曲

上達に影響を及ぼすのは、実は練習曲の選び方なのです。
練習曲を大ざっぱに、「純粋にテクニックだけの練習曲」、「テクニックだけでなく音楽性も求められる練習曲」の二種類に分けることができます。
ここでよくある認識違いを述べます。ツェルニーの練習曲というのがありますが、彼の練習曲を音楽的にアプローチする方は経験上とても少ない気がします。やはり、弾ける、弾けないの見地からしか作品を見てしまいがちです。確かにツェルニーの練習曲は伴奏が単純で、音楽的にも決して深いとは言えませんが、こんなエピソードがあります。私の先輩がドイツの大ピアニストの所に留学した時、ツェルニー40番の1番と2番だけを一年間やらされたと話してくれました。しかも最初のレッスンの時先生がおっしゃったそうです。「なぜ君は左手を音楽的に弾けないのか?」
このツェルニーの1番は右手の練習曲で左手は全音符と2分音符くらいしかない超優しいのです。彼は芸大の先輩で、日本の音楽コンクールで上位を取ってる大変なピアニストであるにもかかわらずです!
その話を聞いたときにはさすがにあ然としました。。。「そういう視点もあるのか。」と。
長くなってしまいましたが、要するにツェルニーの練習曲は音楽的にも弾けなければならないということだったのです。特に、ツェルニーの練習曲はほとんど右手の練習みたいなもので、左手を音楽的に弾こうということに気がつかないからです。
「純粋にテクニックの上達だけ」を目的にしている練習曲は、指を強化することのみを目的にしたピッシュナーという作曲家の練習曲やプラームスの51の練習曲集、リストのテクニカルなパッセージだけを集めたテクニカル練習曲(何百曲とあります!)など、沢山あります。ピアノのテクニックのみに絞った練習曲は毎日のルーティーンとして強化練習には非常に良いと思います。ただし、音楽的ではないので、忍耐力が必要です。典型的なのはハノンです。ハノンは全調でやれば相当効果がありますが、膨大な時間が必要です。なので、スケールとアルペッジョで充分かと思います。
あとは、アルフレッドコルトーという大ピアニストの、指の強化のための練習も非常に効果がありました。真面目にやれば、3ヶ月で指が強くなりますよ。

練習曲と作品との紐付けが上達への近道

それでは、「テクニックだけでなく音楽性も求められる練習曲」という事はどういう練習曲のことを指すのでしょうか?
練習曲の大事な役割りは、自分が弾きたい作曲家の作品をより上手に弾くことにあります。ベートーヴェンの作品をより上手に弾くには、ツェルニーの練習曲を、バッハの作品を弾くためには、バッハのインヴェンションやシンフォニアを勉強するといった、最終的に今自分が勉強している作品をうまく弾く目的ために練習曲が大事な存在となるのです。ショパンの作品を勉強しているのに、ツェルニーの練習曲をやっても90%以上無駄になってしまいます。
ショパンの作品にはモシェレスの練習曲、ブラームスの作品には意外とショパンの練習曲、クレメンティの練習曲はベートーヴェンやクレメンティの作品が組み合わせを知ると、とてもとして効率の良い練習ができ、上達も期待できます。
ショパンやリスト、あるいはドビュッシー、ラフマニノフ、スクリャービンなどの練習曲についは練習曲と言えども、芸術的価値が高く、練習曲+音楽的要素が備わった作品なので、それだけでも充分上達が望めます。
この様に、テクニック上達のためには作品との紐付けがとても大切になるのです。なぜならば、ピアノのテクニックは、楽器の発達とともに変化していき、バロック時代からのフィンガーテクニックからロマン派以降のポジションテクニックなどへ変遷していくのです。
作品と練習曲との紐付けや関連性を認識して、無駄のない効率的な練習が大事だと思います。
くれぐれも、ロマン派の曲を弾くために、古典派の練習曲などを紐づけしないよう注意してください。
次回は、「楽譜の選び方」について書いてみる予定です。
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