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ピアニスト(たち)のちょっといい話、愉快なエピソード

ピアニスト(たち)のちょっといい話、愉快なエピソード

札幌市南区真駒内柏丘の音楽教室、音楽工房G・M・Pの大楽勝美です。

ピアノ経験者は、レッスンでたとえばバッハの曲を学ぶことが多いかもしれません。バッハの「2声のインヴェンション」や「平均律クラヴィーア曲集」などは、ピアノの中級者が学ぶ曲集のひとつです。今回は、バッハに加えて、ピアニストのグレン・グールドを取り上げて、彼が演奏したバッハの作品や演奏の特徴などについても解説します。グレン・グールドがバッハのスタイルをどう解釈していたのかも、紹介しましょう。

独自のスタイルでバッハを演奏したグレン・グールド

ミサ曲などの教会音楽を作曲したことで知られるヨハン・セバスティアン・バッハは、オルガンやチェンバロなどの鍵盤楽器の曲も数多く残しています。このような鍵盤楽器の曲が、ピアノで演奏される機会も増えています。カナダ出身のピアニストであるグレン・グールドは、バッハの作品を好んで演奏したことで有名です。

グレン・グールドの演奏の特徴

グレン・グールドは、バッハの曲を自分のスタイルで演奏しました。1音1音をはっきりと区切って演奏するノン・レガート奏法などは、彼がバッハの曲を弾くときに好んで取り入れた演奏法のひとつです。バッハの曲は、通常の演奏でも8分音符の部分を1音ずつ独立させて弾くのが一般的です。ただ、曲によっては、流れるような滑らかな旋律で弾く部分もあります。グレン・グールドの場合、本来はレガートで弾く部分であってもノン・レガート奏法で演奏することが多かったと言えます。

オリジナルの椅子で歌いながら演奏する

演奏をする際にオリジナルの折りたたみ椅子を用いるのが、グレン・グールドのスタイルでした。彼の父親が制作したこの椅子は、一般的なピアノの椅子よりも低めに設計されており、グレン・グールドは上半身を鍵盤に向かってかがめる姿勢で演奏をしたと言われています。演奏をしながらメロディをハミングするのも、グレン・グールドの特徴のひとつです。実際、録音された演奏を聴くと、ハミングをするグレン・グールドの声や息づかいが聞こえることがあります。このほか、演奏時にミネラルウォーターを持参するのも、彼のスタイルでした。

グレン・グールドが演奏したバッハの作品

グレン・グールドが演奏したのが、次のようなバッハの作品です。

「ゴルトベルク変奏曲 BWV988」

「ゴルトベルク変奏曲」は、グレン・グールドがピアニストとして本格的にデビューをするきっかけになった作品です。穏やかな曲調のこの曲は、不眠を抱えていたある貴族のためにバッハが作曲したことで知られています。「ゴルトベルク変奏曲」の旋律自体は比較的シンプルですが、ピアノ曲としての難易度は高く、上手に弾きこなすためにはテクニックが求められます。

「平均律クラヴィーア曲集」

前奏曲とフーガの部分にわかれた「平均律クラヴィーア曲集」も、グレン・グールドが演奏した作品のひとつです。24の長調、短調があるこの曲は、ピアニストの「旧約聖書」と称されており、多くの学習者に親しまれています。こちらの曲集には、第1巻(BWV846-869)と第2巻(BWV870-893)があります。

「フランス組曲 BWV812-817」

「フランス組曲」は、長調、短調の全6曲からなる小品集です。各曲が「メヌエット」や「ガヴォット」などの複数のパートにわかれているこの曲は、映画やゲームの音楽としてもしばしば使われています。グレン・グールドは、「イギリス組曲 BWV806-811」や「イタリア協奏曲ヘ長調 BWV971」と併せてこの「フランス組曲」を演奏のレパートリーにしていました。

グレン・グールドが共感したバッハの作曲スタイル

日本で「音楽の父」として親しまれているバッハは、当時の音楽界では少し特殊な存在でもありました。

多声音楽を作曲し続けたバッハ

「正しいキーを正しい指で押せば、オルガンは自然になります」や「私は好きな調でオルガンを演奏します」などは、バッハに関する逸話に登場するセリフのひとつです。また、バッハは、時代の潮流に流されることなく多声音楽の曲を作曲し続けました。複数の旋律を組み合わせた多声音楽(ポリフォニー)は、中世期からヨーロッパの教会音楽に取り入れられてきた伝統的なスタイルです。ただ、バッハが作曲に勤しんでいた17世紀ごろは、このような多声音楽が徐々に廃れ、代わりに単一の旋律からなる単声音楽(モノフォニー)が主流になりつつありました。グレン・グールドは、このようなバッハのスタイルに共感し、彼の曲を好んで演奏したと言われています。

自分のスタイルを追求したグレン・グールド

グレン・グールドは、楽曲の演奏、作品の解釈のいずれにおいても独自のスタイルを貫きました。彼は、聴衆に心地よさを与えるだけでなく、演奏を通じて聴いた人にメッセージを伝えることを目指しました。コンサートなどの大規模な演奏会を嫌い、従来の演奏のルールを守らないグレン・グールドは、天才ピアニストと称される一方で異端児と呼ばれることもあります。自らのスタイルと作曲家のスタイルを重ね合わせてグレン・グールドが弾いたバッハの曲は独特の魅力があり、ファンの間では泣ける演奏として話題になっています。

いろいろな演奏を聴いて作品を楽しんでみよう

バッハやグレン・グールドに限らず、音楽家・ピアニストの演奏にはそれぞれ個性があります。演奏を聴き比べてみることは、ピアニスト自身の作曲家の解釈を知ることにもつながります。ピアノに興味がある人は、いろいろなピアニストの演奏を聴いて作品からメッセージを受け取ってみるのも音楽のひとつの楽しみ方です。インターネット上の音源なども活用しながら、気軽に音楽を楽しんでみましょう。
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